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大好きなアートと文芸関係、それに仙台を中心に私が見た日常のことを書いています。時々頑張って大体のんびり。もさらくさらの18年……。

 この日(2月10日)は、元々東北生活文化大学の卒展を見に行ったんですよね。そうしたところ会場前に大きな看板があって、「まあせっかく来たんだから見てみようかしら」という感じで見てみた。そんな感じです。完全に美術モードで来た上に、どちらかというと理系の雰囲気のする卒展でしたから、「私なんか……場違いじゃないかしらん」という気持ちがあったのですが、十和田市とか泉中央とか宇都宮市(兄が20年来暮らしている)とか、割と身近な場所をテーマに展開された研究内容があって、
 「なるほど、これなら私なんかでも十分に楽しめるな」
……後に東北工業大学の卒展(産業デザイン科生活デザイン科)へとつながる大きな一歩となったのです。アームストロング船長が初めて月面に降り立ったくらい大きな出来事でした。
 一方で、まだまだ私の心が出来上がっていなかったので、記事を書くための見方をして来ておらず……一応ある程度、写真は撮ってきたので、少々不足があるかもしれませんが……ちょっと振り返ってみたいと思います。

   *


 まず入り口の方にあったのは、こういう……街の活性化ということを課題に掲げ、それに対してどのようなアプローチで実現するかという研究ですね。せっかくなので十和田市について私が知っている時代のことを少し振り返ります。
 神さんが書いている通り十和田市は街の中心に現代美術館があり、それを中心に図書館とか市役所とか、非常に先進的な街づくりを行おうとしているのですが、そのメインストリート(官庁街通り)を外れると昭和感爆発のアーケード商店街があります。私が来たばかりの頃(2015年ごろ)はまだポツポツと昔ながらの商店があり、雰囲気があったのですが、私が去る直前(2022年2月ごろ)にはシャッター商店街化が加速して何とも寂しい雰囲気になっていました。そのため「もう十和田市は私の好きな十和田市じゃない」と見切りをつけ、忘れよう忘れようとしていたところだったのですが……そうですね、アートを引き金に町全体が盛り上がれば、また好きになれるかもしれません。もう行くことはないと思いますが、もう少し街のことを気にしてもいいかしらん。
 こんな感じで最近アリオが閉店して先行きが心配な泉中央エリアのことや、「中心市街地のウォーカブル化」に向けて動いているけどいまいち確立できていない栃木県宇都宮市など、私にもなじみのある街の問題を取り上げて研究するので、勢い興味を持ってさらに会場内を歩きました。ちなみにこの日は土曜日ということもあってか、意外と子供連れが多かったです。だからあんまり落ち着いて見ていられなかったとは言いませんよ。むしろ私みたいなのが混ざるには、このくらいごちゃごちゃしていた方がちょうどいいんじゃなかったでしょうか。
「私みたいなの」

 その後、竹駒神社に関する研究を読んで「最近は境内にマンションを建てるような神社があるのか!?」などと驚愕しつつ足を止めたのがこちら。後藤香乃さんによる研究「吊り下げ装飾の可能性」についてです。こちらの研究に関しては後藤さん自ら内容について解説をしていただき……私も直接感想を伝えることができて嬉しかったので、ちょっと深く紹介します。後藤さんありがとうございました!


研究目的
「上から吊るす」という行為は古くから様々な地域で伝わり、多くの文化や伝統で象徴的な価値を 提供してきた。例えば、フィンランドでは「ヒンメリ」 を上から吊るし、冬至祭の装飾品として穀 物の精霊が宿っていると信じられていた。日本でも、「風鈴」を平安・鎌倉時代の貴族は魔除けのた めに吊るしていたという記録がある。 このように上から吊るして動く装飾品は、人類にとっては昔から存在しており、多くの文化や伝統で象徴的な価値を提供してきた。1940年に米国の彫刻家であるアレクサンダー・カルダーのモビールをきっかけとして、宗教的な要素に加え芸術的な要素を持つようになった。そして徐々に、装飾的さらには創作活動による娯楽的な要素も持ち、現代では吊り下げ装飾が様々な場所や用途で用いられている。 そこで本研究では吊り下げ装飾の魅力に着目し、 吊り下げ装飾がもつ特徴を活かした制作物を提案することで、吊り下げ装飾の魅力を示すとともに豊かな空間を演出することを目指す。
 という目的のもと後藤さんが設計製作したこちらの装飾は「水の流れ」をイメージしているとのことです。こうした静止画でも十分にキラキラした雰囲気が伝わるかとは思いますが、実際の会場では適度な風が当たることにより飾りが揺らめき、まさに光に反射する水面のようにキラキラした輝きと流れる水のシルエットが浮かび上がるのです。
 文章にもありますが、私もこの吊り下げ装飾から連想したのは「風鈴」でした。そのことは実際に後藤さんにもお伝えしたのですが、目にもきらびやかでなおかつ涼しげなオブジェで……それだけでも十分だと思うんですが、それに対してしっかりとした研究に基づく理論を付け加えることで、今後同じような吊り下げ装飾を見た時に自分でも考えを深める切っ掛けになりそうです。実に良いと思います!

 あとは花の配色デザインを分析し「花の色を美しいと感じるメカニズム」を突き止めようとする研究や、犬の散歩ルートに関するアルゴリズムを分析し「犬好きの人同士の交流機会を増やす」研究、さらに「印象評価に基づいて音を視覚表現に変換する手法の検討」など……そんなことどうすればいいの? と思うようなテーマに対して「確かに、できそうな気がする」ところまで導く理論(=研究成果)がいくつも掲げられ、理解が追い付かないながらも写真だけは撮ってきました。今こうして記事を書きながら落ち着いて読み返せば理解できますけれど、それでも正直「考えたこともない」ようなテーマばかりで……ちょっと私のキャパシティを超える内容ですが、ともかく面白い研究だと思います。まあ私は大学の先生じゃないのですべてを理解できなくてもいいと思うのですが、来年はもっと深く内容を理解できると思うので、今年はこのくらいで勘弁して下さい。

 音を視覚表現に変換するとか、言葉を空間デザインに変換するとか……「音は音として、言葉は言葉として」理解しようとすることしかできない(少なくとも展示を見るまでそれ以外のことをしようとも思わなかった)私にとっては、「そういうものか」とうなずくことしかできませんが、これが理系なんでしょうね……恐れ入ります。
 最後になりましたが、宮城大学事業構想学群価値創造デザイン学類卒業の皆さん、ご卒業おめでとうございます。いずれも私が想像だにしなかったテーマばかりで、見るたび「そういうものか……」と驚嘆しきりでした。すべてを理解するためには、私の心のキャパシティが狭すぎて難しいですが、新しい世界を切り開く第一歩となりました。皆様も社会人として、私が想像していなかった社会を創造してくれることを祈っております。félicitations !

   *   *   *

 これで、2月に行った美術展・卒展のことは大体書けたかな。亀井桃さんの個展については書いていませんが、前に特集を組んだので今回はご容赦いただきましょう。
 とにかく集中的に色んなものを見て、それを書き出すことで、私も大きく成長した気がします。分量もメチャクチャ大盛りになってしまいましたが、「消費されない文化」をまずは私の心に積み上げていくための技術は確実に向上しました。これからもこうして、自分なりに……分量の多寡にはこだわらず、感じたことはすべて書き出し伝えたいです。いつか、誰かが見てくれることを信じて……。

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