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大好きなアートと文芸関係、それに仙台を中心に私が見た日常のことを書いています。時々頑張って大体のんびり。もさらくさらの18年……。

 2月は本当に……ここで書ききれないくらい色んな体験をしました。文字通り人生初の体験もしました。本から知識を得て世界を認識してきたリブレスクな私が本の世界に入り込んで自分がその登場人物になり……物語で読んだような体験をする機会があって……これ以上詳しく申し上げることはできませんが、これまでの日常がすべて吹き飛ぶような爆発的な出来事でした。
 私にとって必要な体験だったとは思いますが、私が求める日常は、その体験の延長線上にあるものではありません。やはり私が求める日常とは「アート・アンド・ブンゲイ」であって、それをもう一度確立するために一生懸命に記事を書いています。
 差し当たって2月27日に行った東北工業大学ライフデザイン学科の卒展について書き始めたのですが、宮城大学事業構想学群価値創造デザイン学類の卒展(2/10)に東北工業大学産業デザイン学科の卒展(2/24)と、2度にわたる理系の卒展を見たおかげで色んなものが見えてきて、書きたいことが大氾濫してしまい、全くまとまらないんですね。私も別に仕事がある人類なので、書ける時間も限られていますし、何よりも「気持ち」が大事ですから。内容をまとめたノートはあるし写真も150枚くらい撮影しているので、それをまとめようと思えばまとめられると思うのですが、ちゃんと気持ちを載せて書かないと納得がいきません。
 一方で、毎日書くと前に宣言して以来(1日に何日か分まとめて書いて予約投稿することも多々ありますが)ちゃんと毎日掲載しているし、穴をあけるのも業腹です。そもそも速報性なんか初めからありはしない気ままなブログだし、この辺でちょっと空気を入れ替えます。久々に、読んだ本のことなどを書きます。いぎなり前置きが長くなってしまいましたが、今日はそんな感じで気楽に書きます。どうか皆様におかれましても、コーヒーでも飲みながらお読みください。



 『都心ノ病院ニテ幻覚ヲ見タルコト』澁澤龍彦著
 立風書房 1990年8月30日初版

 これは先日盛岡に帰省した時、一緒に仙台に連れてきた本です。具体的にいつどこで買ったかは覚えていませんが、最後のページに鉛筆で1800円と書いていたので、この本をその金額で購入したことはハッキリしています。また、これが初めて購入した澁澤さんの単行本であることも間違いないです。当時新たに澁澤龍彥を読もうとなれば河出文庫や中公文庫で刊行されたものがメインで、単行本はそもそも見かけることがなかったので……。
 一方で内容の方については、あまり強烈な印象は残っていませんでした。死刑制度に反対する理由として「制度においても習俗においても完全に聖性を失っている社会では、聖性への可能性においてのみ存在理由を示す死刑を存続させるべき根拠はない」と述べているところだけはすごく鮮明に焼き付いていますが、それ以外はあんまり……でも澁澤さんの単行本だしね、といって何度か訪れた金銭的危機に伴う大処分にも遭わず、ずっと本棚の奥に眠っていたのがこれです。
 今回久々に読んでみた感想としては、
 「よくぞここまで、色んなところから文章をかき集めたものだ」
 そんな印象でした。最後のページにある初出を見ると、もちろん『文學界』『新潮』といった本格的な文芸雑誌に掲載されたエッセーがあり、他の人の本に寄せた解説文などもるのですが、新聞とか映画のパンフレットとか『週刊住宅情報』!? とかに掲載された文章もまとめられているのでビックリしました。だから印象としては「かき集めた」なんです。サドとか終末思想とかエロティシズムとか論じていた人が週刊住宅情報に……やはり60年代と80年代では同じ澁澤龍彥という人物でも全然違うものなんですね。かく言う私も「玩物草紙」という、非常に穏やかな澁澤さんの文章が大好きなんですが。
 じゃあこれは(最近某有名文庫レーベルから刊行された本のように)明らかな商業目的、澁澤さんの死後に一儲けしようとたくらむ人類によって刊行された寄せ集めの本に過ぎないのか……といえば、そんなことはありません。この本は生前から出版する予定で立風書房の編集者と相談していたものであったといいます。そのことはあとがきで澁澤龍子さんがおっしゃっております。
 癌で喉を切り取り声を失った自分の現在を幻灯機で映し出したようなアナクロニズム爆発の小説『高丘親王航海記』を刊行、次作『玉虫物語』に次のエッセーにと意欲を燃やしていた澁澤さん。「ジャン・ジュネ追悼」「ボルヘス追悼」の次に来たのが澁澤龍子さんの「澁澤龍彦追悼」のあとがきになってしまうとは……今こうして読み返すと、遺された人間の気持ちが伝わってきます。それは私自身が長く生きて色んな感覚が身についたことと、最近、身内との永訣を体験したことが影響しているのかな。
 ともかくこれが澁澤龍彥「最後の」エッセー集です。この本を切っ掛けに澁澤龍彥を知り、その文章の中に出てくる人物の名前を知り、後にその人の著書に触れる。そしてある程度遍歴を終えてから戻ってきて、「ああ、これはあの本に載っていた文章だな」とか「うんうん、あそこで読んだ本に書いてたっけね」と思い出す……ちょっとしたハンドブックみたいな面白さを感じました。ジャン・ジュネは未読ですがボルヘスは去年の暮れに読んだし、三島由紀夫も稲垣足穂も結構ガッチリ取り組みました。
 何よりもベルメール! これは私のなかでも特に思い出深い文章です。
 今は閉店してしまった仙台市内の喫茶店で、「澁澤龍彥が好きなんです……」と言ったら店員さんが差し出してくれたハンス・ベルメールの写真集。これに載っていた「写真家ベルメールーー序にかえて」という文章を、実際にベルメールの写真集の中で読むことができたのは、私の読書体験の中でも一等素晴らしいものでした。再びその文章を読み、あの時の写真集の重さ、紅茶の味、お店の人との会話……すべてが鮮明によみがえってきて……結局お店を訪れることができたのは一度きりだったのですが、素敵な体験でした……。
(2022年12月7日撮影)
 こうして何でもかんでも写真を撮っておくのはいいですね。フォトジェニックだとかSNSで10万いいねだとか、そんなことはどうでもよくて、自分の記憶を補強するためにも、私はやたらめったら写真を撮りまくります。

 そんなわけで、今日の記事を書き上げることができました。本の感想文と私の個人的なことと、そういうものがないまぜになったへんてこな文章ですが、良いんですこれが私にしか書けない文章なんですから。終わりで~す!

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