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大好きなアートと文芸関係、それに仙台を中心に私が見た日常のことを書いています。時々頑張って大体のんびり。もさらくさらの18年……。
「毎日書く」と言っていたものの、意外と毎日書くというのは大変なものですね。毎日書くことも、「こういうテーマで書こう」と計画を立てて書くこともできない私は、やはり文筆家にはなれないようです。いや別に「小説家になろう」なんて思うようなことはありませんが。あんなの書けませんよ私には……。

 確かに文章を書くことは昔から好きで……小説を書いて同人誌で発表したこともありましたが……ただ、どこまでもそれは自分の心象世界のスケッチなんですよね。「こういう物語を書いたら世の中の人が面白がってくれるだろうな」というヴィジョンがない。ただただ自分が面白いと思ったこと、自分が考えたことを文章にして表現する。それが私の「小説」でした。

 また、私にとって自分の書いた小説というのは、いわば『人工楽園』でした。これはユイスマンスの『さかしま』につけられた副題の引用ですが、まさにそういうもので……私はいつも小説の中で自分が出来ないことを行い、自分の理想のヒロインと恋に落ち、自分の欲求を満たしていました。そういうものからスタートしたんです。


 ……「お話をかくひと」を夢みるとき、おかしなことにわたしは、無意識のうちにつねに女であることを忘れ、一個の人格として、男としてふるまっていた。この男は、少女の夢想のなかで次第に成長して、ついには架空の恋人役をも兼ねるにいたる。ルイス・キャロル=ドジスン教授にせよ、ポオのウィリアム・ウィルスンにせよ、ドッペルゲンガーはほとんど同性の相似のすがたであるが、わたしの場合はセラフィータなみに、両性具有の願望をもどうにかして叶えようとしていたものか。 矢川澄子「不滅の少女」(『反少女の灰皿』)


 これは先日図書館で借りてきたユリイカの矢川澄子特集に収録されていた矢川澄子さんの文章なのですが、これと反対に私は女性を主人公に据えた小説を書くようになりました。私が当時やろうとしていたアニマとの和解は両性具有の願望なのか。あるいは理想のヒロインを作り上げようと躍起になるピュグマリオンなのかもしれませんが、事実として、「男性が想像する女性」が一人称でモノローグを語る形式で、たくさん書きました。その時、私は女性になり切って、文章を書いていました。

 女性になり切った私が正直な感情をさらけ出し、それを受け止める男性がいる。そういう形式もあれば、別な女性(これもまた私が女性になり切って細かい心理的なアレコレを書き出している)との交流を描いた作品もありました。20代後半~30代前半までの『小説』は、こういうのが多かったですね。

 その後、「私の人格は私ひとりでいい」と言って小説を書くことをやめ、人工楽園への扉を閉ざし、一般的に言う「現実」世界で生きようと思ったのですが、結果は惨憺たるもので……それで、精神的に自死寸前まで追い込まれ、ギリギリのところで再び人工楽園の再建を始めたのです。現在は自分で創作することよりも、こうして感じたことを文章にすることが多い気がしますが。

 そんな中、自分の体験を日記に書き、それをそのままブログで公開するには少々抵抗があったので小説という体にして編集し発表した久々の公開小説が下記『ハロウィン・シンデレラ』です。

ハロウィン・シンデレラ

 面白い物語を書こうと思って書いたわけではなく、殆どノンフィクションの――実際にやってみたことをベースに書いたものなので、どう評価されようが構わない……と思っていたら、なんと! こんなものにブックマークを付けてくださった方がいるんです! ありがとうございます!

 まあ、これに気を良くして第二作第三作……なんて書くつもりはありません。そういうことができないから、私は小説家にはなれないんです。そもそも昨今流行のハレム的でタイトルばかり長くて中身がスッカスカのラノベ的なものをスラスラ書けるような技量も趣味も持ち合わせていないし読む気も起らないし。

 ……あれ。今回は「ブログを毎日書くのが大変なので、日常の何でもないことを書いてみました」という記事を書こうとしていたのに、またおかしなことを書いちゃった。また精神のストリップをしてしまいましたね。澁澤龍彦さんは「性に合わない」といって途中で自分の年表を書くことを中断したと言いますが、私はこうして書き出し公開することで、これまでの自分を補強することになるので、どんどん脱いでいきます。そしてすべてを書き出してしまったところから、ようやく前に進めるのだと思います。

 あとは、より直接的な理由としては……最近榴岡図書館に行った時「小説家になるために」とかいうタイトルの本の背表紙を目にし、自分のなかでうずいていた亡霊を鎮めるために書きました。私にとって過去のことを振り返り書き出すってのは、精神のストリップというか、亡霊退治や鎮魂の儀式みたいなものですね。そして、同時に文章を書く練習であり解放治療でもあります。何より好きだし楽しいし。

 かなわない夢もありますよ。でも、ちゃんと決着をつければいいんですよ。そうすれば、結構生きていけますから。

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