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大好きなアートと文芸関係、それに仙台を中心に私が見た日常のことを書いています。時々頑張って大体のんびり。もさらくさらの18年……。
村山早紀先生の『百貨の魔法』ではありませんが、帰天した叔母は生涯を百貨店の店員としてささげたような人物でした。昭和29年生まれの数え年70歳だったのですが、最後まで若々しく、肌つやの良い人でした。さすがに帰天直後は身体中に内出血だらけで無惨な状況だったらしいですが、それを綺麗に化粧してくれたのが「おくりびと」なんでしょうね。感謝です。

 盛岡に住んでいた頃は街の中心にある老舗百貨店「川徳」でず~っと働いていて……婦人服とか、そっちの方面だったので私が働いているところを見たことはないのですが、とにかく川徳一筋で主任クラスまで上り詰めたそうです。上り詰めたっていうか、自然とそうなったのかな。不肖の甥っ子は職を転々としてようやく落ち着いたというのに……素晴らしいです。

 その後、高齢(御年101歳!)の祖母とともに仙台に来てから、何をしているのか……って、もう働かなくてもいい歳なのに、どうやら仙台三越! で仕事をしていたようです。これは帰天した後に知った話だったのですが、せ、仙台三越!? と驚愕しました。仙台の老舗百貨店と言えば藤崎ですが、三越って言ったら、これまた一流デパートです。そんなところで仕事をしていたのか! と、接客業で心身がめちゃくちゃになった発達障がいの甥っ子は驚き、「やっぱりスゲーなあ」としみじみしちゃったのでした。

 そんな叔母ですが、実は……それほどたくさん話をした思い出はありません。生涯現役で一流百貨店の花形接客スタッフみたいな生き方をしていた叔母は非常に……今風に言えば「サバサバした」女性で、引っ込み思案で劣等感のカタマリみたいな私はあまり積極的に話すことができませんでした。むしろ仲が良かったのは伯母の娘……要するに私の従姉(8つ上と5つ上)みたいで、ずっと「お姉ちゃん」と呼んで親しんでいたみたいです。

 それでも私が仙台に引っ越して、こうして会える距離にいるのも縁だと思い、LINEでのやり取りなどをたくさんしました。実際に花見や、祖母のマイナンバーカードの写真を撮るという名目で住居に行きご飯を食べさせてもらったりもしました。そしてなかなか会わない代わりに、あちこち行って撮って来たゆるキャラとの自撮り写真を送り付けていたので、きっと最期に思い出したのは仙台弁こけしとかまかプゥ(東北電力のゆるキャラ)と一緒に写っている私の姿だったでしょう。

 弔辞の時もこれをネタにして話しました。というか、このブログで書いている内容は、ほぼ弔辞で読んだ内容です。当日の朝にいきなり指名されたから……ということもあるのですが、ろくに原稿なんて用意する時間もなく、ひたすら思いついたことをしゃべったという感じです。最後の方はこんな感じで締めくくりました。

 「……そんな写真が最後の思い出だろうから、あの世に行くまでの修行の間に思い出したら、まったくおかしなことをやってるなあ、って笑ってほしい。そして成仏して、時々こっちの世界を見たら、「相変わらずだな」って笑ってもらえるように、これからもそういう写真を撮るから」

 それが私の供養です。いよいよ葬儀屋のCMみたいになっちゃいますが、それでいいんじゃないですかね。個人のことを思い出して明るく笑う。それが一番いいと思います。私が帰天する時は、遺された人たちが悲しむのを見たくないし。

 うん……そうですね。改めて、こうして書いていると、思いました。

 つらいこと、たくさんありました。「もうヤダしにたい」と思ったことも、100回くらいあります(それ以上かも)。それでも色々なきっかけがあって、何とか引き戻されているんですが、改めてそう思いました。帰天でも成仏でもいいですが、幽明境を異にするというのは今肉体をもって生きている全人類に例外なく訪れるものであって……故人がこんなふうに思っているだろうな、といって笑うのは遺された人たちの権利であると思います。そこが天国なのか極楽浄土なのかわかりませんが、穏やかな気持ちで我々を見下ろし、時に「頑張ってるね」とか何とかって言ってくれればいいかなと思います。ま、天国の方が楽しすぎて私たちのことを忘れてくれてもいいのですが。

 こっちにいた頃は、最期は心筋梗塞で……心臓の外まで血が漏れ出して、循環器科の先生も外科の先生も打つ手がないって言っちゃうくらい無理して……そのまま天に召されちゃったけれど……いいよね。ずっと第一線で活躍してきたんだから……ようやく、長期休暇が取れたんだよ。もう、働かなくてもいいんだよ。だから、まあ……私はもうしばらく、こっちの世界で暮らしてるから、そっちで楽しくやっててね。

 また逢おうね。そのうち。

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