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大好きなアートと文芸関係、それに仙台を中心に私が見た日常のことを書いています。時々頑張って大体のんびり。もさらくさらの18年……。
おはようございます

 上巳の節句は、皆様いかがお過ごしでしたか

 高杉です。


 私は男性ですし、兄弟も文字通り「兄と弟」なので、小学校のころに学校のイベントとして食べさせてもらった菱餅がすごくおいしかった……というくらいの思い出しかないのですが、今回読んだ梨木香歩先生の『りかさん』は、2つ以上の意味でタイムリーな感じなので、その話をします。

 なお、これは青森県十和田市の未来屋書店で特価本コーナーに打ち捨てられていたものを拾い上げたものです。別に時節的なことを意識したわけではなく、『西の魔女が死んだ』とか『裏庭』といった、梨木香歩先生の作品が好きだったから、「ちょっと読んでみよう」と今年の1月かそこらに買ったものです。のちになって自分の中で勝手にリンクさせて気持ちが盛り上がるから、やっぱり物語ってすばらしいですね。

 では、本題に入ります。


 平成11年に初版が世に出た『りかさん』は、小学生の女の子「ようこ」が主人公です。この子が誕生日プレゼントに『リカちゃん』の人形が欲しいと言ったら、おばあちゃんから、確かに「りか」という名前の女性の人形が送られてきました。ただ、それは黒髪の市松人形であって、しかも、人と心を通わせる術を持っていたんですね。その風格ゆえに、小学生のようこは「りかさん」と呼び、身の回りにある古い人形たちの――そして、人形に残された、かつての持ち主たちの思い出――に触れて、様々な時代を生きる……そんなファンタスティックな物語です。


 ここまで、新潮文庫版の背表紙にある解説文をもとに書きました。ここから先は、一通り読んだあとの、私の感想です。

 
 『りかさん』の物語は、さらにふたつの章に分かれます。最初は「養子冠の巻」――これが、ひな祭りの話です。ひな祭りの話というか、ひな人形の話ね。ようこの友達・登美子ちゃんの家に飾っていたひな人形たちと、イギリスから海を渡ってやってきたビスクドールの物語。そして次が「アビゲイルの巻」――



 いや、そうじゃなくて。Wikipediaでいうところの青い目の人形ですね。その人形に込められた悲しい物語です。

 なお新潮文庫版には、それら2つの物語の数年後――大人になった蓉子(ようこ)の物語『ミゲルの庭』が収録されています。


 詳しい内容を含めた解説文は、ほかの方がたくさん書いていらっしゃるので、私は簡単に感想をまとめるだけにします。……そうじゃないと、話が無限に広がって収拾がつかなくなりそうな気がするからです。あと、ロシアとウクライナの戦争が始まってしまって、上手な感想を書けなくなってしまったからです。今もこうして次の文章を書こうと思うものの、色々な感情が渦を巻いて吞み込もうとするので、本当に端的に書きます。

 どのような理由があれ、戦争は嫌です。実際に血を流し斃れる人たちの痛みもあるし、ともすれば「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」で、その国のものや文化、そしてその国の人たちすべてが嫌いになり、それに憎しみをぶつけてしまいたくなるからです。

 じっさいに、「ロシアの人だから」という理由で誹謗中傷を浴びせられ悲しんでいるロシアの人がいる、と『めざましテレビ』で見ました。そうじゃないですよね。ロシアだって中国だって韓国だって、政治レベルでは日本にとって不利益なことをしてくるかもしれませんが、私たち民間人レベルでは、まったく違うわけですから。

 「話せばわかる」それはまったくもって甘い幻想だとか平和ボケだとか、ご批判もあろうかと思いますが、私はそれでいいです。平和と友好の思いを胸に、海を渡ってやってきた人形の遺した思いに触れてしまった私は、もはや二度と戦争を肯定することができない人間になってしまったのです。いつでもどこでも誰も戦争はするべきではありません。私はそう言い続けます。

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