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大好きなアートと文芸関係、それに仙台を中心に私が見た日常のことを書いています。時々頑張って大体のんびり。もさらくさらの18年……。
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 最初にヒロインとして名前をあげたいのは、やはり辰宮由佳理です。藤原カムイ氏が描いたユカさんはとても可愛かったです。兄の辰宮洋一郎を「お兄さま!」と慕う快活な女学生だったのですが、強大な霊力を持つため加藤の手によって将門降霊の依代にされ、蟲術を仕込まれ、心を病んでしまいます。さらに物語が進むと幼少期の忌まわしい出来事や、ある意味蟲術よりも恐ろしい『邪恋』の果てに最愛の人に殺されそうになったり愛すべき子を殺しそうになったり……と、幸福そうな描写がほとんどないままこの世を去りました。それらの原因や結果すべてが、本人と関係ないところで起こり、ひたすらそれに呑み込まれていく……そんな女性です。

 次は、辰宮恵子さんですね。福島県の相馬俤神社の娘で、魔人加藤と渡り合えるくらいの強烈な霊力を持った人です。相馬俤神社は相馬市の氏神、つまり平将門を祀る神社で、神託によって将門の眠りを妨げる魔人加藤を討つべく辰宮家に嫁入りして戦いを挑みます。映画では原田美枝子さんが演じておられましたね。白装束に鉢巻を締め、白い神馬にまたがって悪鬼を踏み砕く姿は東洋のジャンヌ・ダルクか……というところですが、原作ではその後も何度となく登場します。加藤に立ち向かい、のちに結ばれ、別れた後は加藤やそれ以外の……破壊と混沌をもたらそうとする脅威に立ち向かい、最後の最後まで戦い抜いた女性でした。彼女にほれ込んだ人は「菩薩」だと言います。とても強くて、あらゆる人間を受け入れ癒してしまう優しさを持つ人でした。

 あとは、辰宮由佳理の娘『辰宮雪子』も中盤の重要なヒロインとして活躍……というのかな。強烈な霊能力はしっかりと母親から受け継いでいるので、本人の意思またはそれと関係ないところで力を発揮します(映画第2作『帝都大戦』に至っては、もはや荒俣さんの意志とも関係ないレベルで力を発揮していますが、あれはパラレルワールドみたいなものなので)。ただ、雪子嬢が人格ある女性として振る舞う時代は、その周りにいる人物の方が強力な異彩を放っているので、今一つ印象が薄いというのが正直な感想です。

 ここに続けて本来であれば昭和70年代の戦いにおけるヒロイン『鳴滝二美子』と『大沢美千代』について触れるべきなのでしょうが、昨晩ぶっ通しで『大東亜編』(愛蔵版の最終章)を読んだばかりなので、満州映画の女優『出島弘子』嬢について触れたいと思います。Wikipediaにも載ってないし!


(愛蔵版『帝都物語』第六番より)

 辰宮恵子さんを探し求めて大陸まで渡って来た黒田茂丸が見間違えるほど見目麗しい女優です。かつて、ある映画の主役を演じることが決まったものの国家総動員法によって幻となり、それ以来「二十七歳の誕生日に死ななければならなかった」と言いつつ大陸に渡って満州映画の端役女優として暮らしている出島嬢。そんなことを言いつつも、懇意にしている小さな女の子が病気で死にかけているところに出くわすと矢も楯もたまらず介抱したり、映画を満州最初の『文化』にしようとしているのなら、「女優だって!」と憤慨するなど、とても可愛らしいのです。

 ちなみに、何でこんなに出島嬢がプンプンしているのかと言うと、満州映画の理事長たる甘粕正彦(!)が、地底に巣食う化け物に襲われる映画を撮るための主役女優として声掛けしたことが原因です。映画といってもその化けものは作り物ではなく「青古」と呼ばれる本物で、それと黒田茂丸そして加藤保憲との戦いが、この『大東亜編』のクライマックスなのですが……。

 『帝都物語』の女性は色々と特殊能力がある人ばかりで、なかなか感情移入しづらい部分があるのですが、私は出島嬢が好きです。珍しく、何の特殊能力ももたない一般人だからです。それでも自分の宿命を精いっぱい生き、黒田茂丸らの助けを借りながら戦い抜いたからです。そういう一生懸命さが、物語を読み終えて数時間が経過した今になってじわじわと胸にあふれてきました。

 そして、このタイミングで先ほど置いといた現代篇の2人のヒロイン『鳴滝二美子』と『大沢美千代』の存在も大きくなってきました。養父で物語の初期から生き延びている鳴滝純一翁の狂気じみた実験(ただし、私はその実験によってつくられた世界をとても羨ましく思ってしまう!)に心を痛め、命がけで止めようとする二美子さん。とある人物が転生(昭和45年11月25日以降)し、辰宮恵子さんや団宗治さんのサポートを得て霊能力とコンピュータで魔人・式神と闘った美千代さん。……そうですね、徐々に……私自身の心も落ち着いてくれば、きっと、見えてくるものがあるのでしょう……。

 最近はどうも心が穏やかではありません。対面で話している時、緊張しすぎて声が震えるだけでなく、涙目になってすすり上げるような場面もありました。全く尋常の精神状態ではありません。そんな中で再読した『帝都物語』とは、私にとっての『帝都物語』とは何だったのか。そのあたりのことをまとめてみたいと思います。

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