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大好きなアートと文芸関係、それに仙台を中心に私が見た日常のことを書いています。時々頑張って大体のんびり。もさらくさらの18年……。
おはようございます。

 まだ書いていなかったので書きます

 いぬがみです。


 2~3年前から八戸の古本屋で目をつけていた荒俣宏先生の『新帝都物語 維新国生み編』を買い求め、読みました。先月の話ですが、まだ書いていなかったので少しだけ書きます。というか今回は土方さんの話だけで終わります。思いのほか長くなってしまったので。


 歴史に残る大長編『帝都物語』は明治から昭和73年までの、ざっと100年にも及ぶ物語であり、帝国軍人から自衛官になった魔人・加藤保憲と人類との戦いが繰り広げられます。幸田露伴氏から平岡公威氏さらに出版元の社長まで実在の人物も物語に深く絡んでくるのも特徴です。

 その物語が完結したあと、時代がぐんとさかのぼったのが『帝都幻談』で、これは江戸時代、加藤保憲のルーツとなった魔人が平田篤胤・遠山金四郎らと戦う物語だそうです(未読)。そして私が今回読んだのはその帝都幻談の直接の続編です。平田篤胤門下の人々と魔人との戦いに喧嘩師仕様の土方歳三さんが参戦。青森県の千曳というところから始まり五稜郭へと転戦していく……そういう話です。


 とにかく土方さんが出ているといえば手を付けてしまう「追っかけ」のごとき犬神でありますが、ある程度、物語によって決まったイメージがあるような気がするんですよね。

 たとえば、おそらくシバリョーこと司馬遼太郎『燃えよ剣』の喧嘩師のイメージなんでしょう。生まれながらの喧嘩好き、戦闘民族、殴り合いも斬り合いも戦争も喧嘩でありいかにして喧嘩に勝つかが人生――そういうイメージ。悪鬼羅刹のイメージ。

 『新帝都物語』の土方さんは、そのイメージです。洋服もライフル銃も、使えるものだと思えば何でも取り入れる土方さんが今回は霊的なアレコレと出会い、「なんだぃ、そいつぁ」と多摩の地言葉で嘲笑したり驚愕したりしつつ魑魅魍魎が跳梁跋扈する怪異な世界で戦います。多分この後は廃棄物となって時空をさまよった挙句、薩摩の「妖怪首おいてけ」と殴り合いの喧嘩をするものと思われます。


 ただ私が函館で作り上げた土方さんは、もっとさわやかで穏やかな人なのです。もちろん戦闘となれば的確かつ激烈な采配を振るうのですが、平時はそういうわけでもない、と。

 実際に、新撰組時代からの生き残りであった中島登さんが、

 「時間がたつにつれて温和になっちゃって、まるで赤ん坊が母親を慕うように、みんな土方さんのことを大好きだって言ってたよ」

 てな意味合いのことを言っているので、たぶん実際にそうだったんでしょう。

 新撰組副長の時代は組織を守るためにあえて本来の自分を覆い隠し、鬼の面をかぶって、いっさいの汚れ役を自分が買って出た……そういった呪縛から解き放たれたことで、本来の自分を取り戻しつつ、自分が追いかけ続けた理想の生き方を全うした……そういうことだと思うのです。

 これは土方さん寄りの作家が書いた物語のイメージですね。村瀬彰吾先生の『人間土方歳三』とか萩尾農先生の『散華 土方歳三』とか。特に『散華 土方歳三』は、私が知る限り最も優しい「芹沢鴨」さんが描かれています。こんな鴨さん見たことない。自分がもはや生きてはいられないことを悟り、自分を殺しに来た土方さんに「すまねえな……歳……」と言い残して絶命する鴨さん。冒頭のわずか数ページで号泣です。



 ……というわけで、この「新帝都物語」の土方さんは、そういう方です。これだけで話が随分と長くなってしまったので、いったん筆をおきます。続きは未定です。

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