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大好きなアートと文芸関係、それに仙台を中心に私が見た日常のことを書いています。時々頑張って大体のんびり。もさらくさらの18年……。

 2月27日――この日はいくつも美術展やら卒展を見て回り、さらに夜にはアベココアさんのライブに行ったりと大忙しの日でした。とりあえず時系列でまとめてみて後から一つずつ回想という形で振り返っているのですが、今回はこれ。

 *

 元々は「宮城教育大学美術科卒業修了制作展」を見るために東京エレクトロンホールに行ったのですが、初日は少し遅い時間からの会場ということに現地に着いてから気づき、ちょっと図書館で時間調整しようかとメディアテークに行ったら何かやっているみたいだなあ、と……いつものようにふらりと立ち寄った次第です。

 「新現美術協会」……今年で73回目です。受付の方によると戦後に始まった新現美術……いわゆる『日展』とか『二科展』のような主流とは違った方向性の作品を制作する美術家たちの展覧会ということで……久々に入場料のある美術展を見てきました。受付の人からして「かれこれ50年、美術の世界でやっています」といった年配の、そして物腰柔らかく丁寧な男性でしたから、これはどんなものかなと勇んで突撃しました。
 なお、この美術展については、いつものように気軽に写真を撮って公開して……ということをしていいのかどうかわからないので、公式ホームページへのリンクを貼っておきます。こちらで作品についてはご覧いただけますので、とりあえずこの場は私のレポート(感想文)だけにとどめさせていただきます。

 新現美術協会ホームページ

 感想を率直に申し上げると、
 「いぎなりスゴイ」
 そんな感じでした。平面も立体も、写実的なものも抽象的なものも色々ありましたが、やっぱり長い間美術家として走り続けてきた人たちの組み上げた作品というのは言葉を失うほど素敵なものです。あまりにも技術がすごすぎて、私の感情も全く暴走することなく……しげしげと作品に見入り、「ああ、いいなあ」「素敵だなあ」と味わうことができました。
 感情よりも理性が先行して、そのフィルターを通して作品の投げかける印象を受け止めるので、感情からのリプライも割と理性的です。つまり「写真と見まがうほど精緻な輪郭線があり、それを彩るヴィヴィッドな色遣いが素敵」だとか「ネガポジ、光と影の世界に配置されたオブジェがシンメトリー的だけど、よく見てみるとそれぞれの世界で微妙に表情が異なっている」だとか、「昔の香港みたいな怪しい日本語のネオンサインが乱立する夜景がいかにも現代的」だとか、そんな風に説明できちゃうんです。別に難しいことをひねり出そうとしているわけじゃなく、「絵のどの部分にどう感じたか」というのが説明できちゃう。そういう作品ばかりでした。
 とはいえ、そういうのをパッと見て瞬時に言葉に変換できるかというと、そんなことはありません。いつだって私の単焦点マニュアルフォーカスな心は、ピント合わせが大変です。近づいてみたり離れてみたり、「う~ん……」と言いながらいったんその場を離れ、後になってまた絵の前に近づいていったり。あるいは自分が持っているフィルターを差し替えてみたり。新しい眼鏡を作る時のような調整を続けて、ある時カチリとピントが合った時、「とくん」と心が大きく脈打つんです。グラップラー刃牙で愚地独歩が菩薩の拳に気づいた時のような表情になるんです。
 いずれも素敵な作品ばかりでした。もっと激しく感情を揺さぶられる(=もっと好きな)美術家さんは何人かいますが、今回はこうして美術展を見る側のスキル……「ピントの合わせ方」について大きな経験になりました。私なんかが別に美術プロパーになって解説や批評をする必要はないと思うのですが、アートに助けてもらっている身としては、こういう心のときめきを大切にしたいです。そのためにもこうやってピントを調節し、合焦範囲を広げていかなければ……。
 なお、こないだの記事も書きましたが、すべての展示を見終わった後、受付の方に感想をお伝えし帰ろうかとした時に、
 「お元気で!……ご活躍を!」
 というふうにお声を掛けていただきました。冒頭に掲載した写真のような恰好をして行ったからか、どうも現代アートをやっている人に思われたようです。いや実は美術「2」でして……とは言いませんでした。だって嬉しかったんですもの。やはりこれからは、こういう方向性でオシャレをして美術展に行くのがいいかしらん。

   *   

 さて、そんな感じで美術展の会場を後にし、1階下の別な会場で東北工業大学生活デザイン学科の卒展を大真面目に眺め、開場時間も過ぎたところで改めて東京エレクトロンホール(この建物も今回初めて入ります!)に突入しました。
 
 果たして私のような人間をも受付の人は温かく迎え入れてくれました。そしてゆっくりと会場内を眺めまわしました。作品によって写真撮影/SNS投稿がOKだったりNGだったりするので、ここも安全のためにテキストだけで話を進めていきます(一部を除く)。
 すでに色んな美術展やら卒展やらを見て回ったうえでの感想なのですが、とりあえず会場全てを見て回って感じたことは、東北生活文化大学の卒展と専門学校日本芸術デザイナー学院の卒展を合わせたような雰囲気だな、ということでした。どういうことかというと、美術系の大学らしく油彩とデジタル、平面と立体……製作者によって形は様々だったのですが、そのデジタルな作品というのがアニメだったりVtuberのキャラクターモデルだったりして、
 「へえっ! こういうのもあるんだ」
 と意表を突かれました。この辺がやっぱり今風ですよね~。良いと思います!
 そのうえで、私の好みとしては、やはり油彩画に心惹かれます。特に大胆な色使いでヴィヴィッドに彩られた作品なんかは真っ先に感情が動きますね。その一方で、全体的に暗いトーンで塗り固められた暗黒的な雰囲気の作品も、心が落ち着くので好きです。写真撮影がNGだったので私の文章での解説となりますが、「白衣を着て椅子に座った人間――ただし赤い心臓がむき出しで、首から上は既に髑髏になっている」絵があって……これなんかは私の心の暗黒面に共鳴しました。ええ、可愛いだけじゃなく、こういうのも大好きなんです。
 一通り会場を眺め、ここにも付箋で感想を貼り付けるコーナーがあったので、しっかり感想を書いてきました。……その中で気づいたのですが、
 「裏に回って写真を撮れる発想が面白いと思いました」
 という感想を誰かが貼っていたのですね。「あれ? そんなのあったかな?」と思って会場内をうろうろしていると……「もしかして、これかな」というのがあったので……受付の男の子にお願いして写真を撮ってもらいました。

 「ポーズは、そんな感じでいいですか?」
 「あ~そうですね、まあ、あんまり撮られ慣れてないからわかんないですけど……はい、お願いします!」
 「はい、それじゃ撮りま~す!」
  

 アレ!? なんか可愛くないですか!!!?
 いや正直なところ、なかなかの大作だったので全体が収まるように撮影すれば私の姿も小さくなって……「ナンチャンを探せ!」みたいなつもりで写真を掲載しようと思ったのですが……正方形でトリミングしたらピッタリ収まるし、しかもちょうどこの日、白づくめのコーデでお出かけしたから、見事に溶け込んで……本当に白いドレスを着て写真撮ってもらったみたいになってる!!!
 そうか、そういうことだったのか……! すべてはこうして横画面で撮影して、正方形に切り取ってInstagramに投稿する時に最大限見栄えが良くなるような計算のもとで……!

 ゴメンナサイ、私、こうして加工しなかったら、それに気づかず……
 たった今、そういう計算のもとで作られたことに気づいて……
 なんかビックリしすぎて泣きそうです……!
 素晴らしい……本当に素晴らしいです……!!!


 会場で作品を眺めている途中で、出来上がったばかりのパンフレットもいただきました。今回の卒展で作品を発表した皆さんがどのような気持ちで制作したのかという言葉が書かれていて、改めて気持ちが温かくなりました。当日、見終わった直後にノートに書いた感想では「極端にエキセントリックなのはなくて、全体的に安定して見られた気がする」と書いていましたが、安定していたからこそ、こうして時間が経つにつれ、良さがじわじわと……あるいは急にパチン! とはじけるように胸を打ったのでしょう。

 
「天才もAIももう足りていてそれでも私は美術を学ぶ」
 これは今年の「現代学生百人一首」のうち、入選作品として宮城の大学4年生が書いた一句です。前にも書きましたが、やはり私は美術そのものの美しさもさることながら、それを創った人の気持ちに触れて心を動かされます。自分なりに美術作品と向き合い心をときめかせる……あえて自分の勝手気まま、心の向くままに自由な受け止め方をして感情を羽ばたかせるのも楽しいのですが、やはり英文科上がりの身としてはテキストがあると理解しやすいです。いっそう作品への愛着が湧くのです。後にまた別な作品に触れた時、それをよりよく理解するための助けになるのです。「心のピント合わせ」の技術が上がる……私なんかが言うのもおこがましいですが、「審美眼」が鍛えられるのです。
 そして私も人間として生きていこうという希望につながるのです。私にこういう感動を与えてくれる人間がいるのなら、私もその感動を伝えられる人間になろう、って。

 大げさですか? でもいいんです。
 美術も文学も、いかに心が動くかが大事なんですから。私はどちらも素人ですけど、心を動かされた人間として、そのことはしっかり伝えたいと思います。
 宮城教育大学美術科の皆さん、ご卒業/修了おめでとうございます。今回はたまたま『OH!バンデス』の伝言板デスを見ている時に開催を知り駆けつけた次第ですが、皆様の素敵な作品に触れられて、本当に幸せでした。これからの皆様のご活躍を心よりお待ち申し上げております。félicitations!

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