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大好きなアートと文芸関係、それに仙台を中心に私が見た日常のことを書いています。時々頑張って大体のんびり。もさらくさらの18年……。

 ここ3日ほど、ひどく神経症的な美術展の感想文が続いたので、この辺でちょっと一服します。本当はこういう、穏やかな記事を書く人間だってことをアピールしておかないとね。
 これは2月23日のことですが、私のアパートから生協までの道中にある教会の庭で梅の花が咲いているのを見つけました。
 桜の花と比べて梅の花というのはあまり馴染みがありませんでした。学校でも公園でも染井吉野だ枝垂桜だ河津桜だ八重桜だ……私が通った幼稚園の名前も桜幼稚園だし昔好きだった漫画は『カードキャプターさくら』で好きな食べ物は桜餅……それに対して梅から連想するのは「梅酒」に「梅干し」と何だか大人向けの、ちょっと渋めの印象でした。
 ただ、それは私があまりに子どもっぽい精神の人間だからということばかりではありますまい。私が生まれ育った北東北というのはずっと寒い時期が続いてようやく春になると、梅の花も桜の花もいっぺんに咲き誇るという土地柄ゆえ、同じ時期に咲くならより華やかな桜に気持ちが行ってしまいます。……それどころか、下手すると桜の花も咲くか咲かないかわからないうちに一気に葉桜になっちゃう年もあったりするからたまりません。
 だからきっと、仙台に来てからでしょうね。気候的なこともあるし、榴岡天満宮で菅原道真公と梅の花の関係について知ったことで、桜に先駆けて咲く梅の花が好きになったのです。

 東風吹かば にほひをこせよ梅の花
 主なしとて 春を忘るな
 <『拾遺和歌集』 巻第十六>



 というふうに書いてみましたが、実は私が大好きな歳さんこと土方歳三も、多く梅の花に関する句を残しているんですよね。『豊玉発句集』で検索すれば色々と出てくると思いますが、ここは私が初めて句に触れ、解説および素敵なイラストとともに「ロマンチ」な気分に浸った「WhiteWind歴史館」さんをご紹介したいと思います。

豊玉発句集|WhiteWind歴史館

 司馬遼太郎の『燃えよ剣』にあるように新撰組副長時代に句をひねっていたかどうかはわかりませんが、多摩時代から親しくしていた沖田君なんかは小説のように「豊玉宗匠、ご精励ですな」と言ってからかったり、出来上がった句を見て(ひどいものだ)と心の中で苦笑いしつつ「ああ、この句はいいですな」などと言っていたりしていたのかもしれません。
 『鬼の副長』『希代の喧嘩師』としての側面が印象的な『燃えよ剣』の土方歳三像ですが、意外と俳句に関してはこんな作風であると説明されています。
 
この男の気質にも似あわず、出来る句は、みな、なよなよした女性的なものが多い。むろんうまい句ではない。というより、素人の沖田の眼からみても、おそろしく下手で、月並な句ばかりである。

 そして沖田君によればこれは「歳三がもっている唯一の可愛らしさというもの」であって、「もし歳三が句まで巧者なら、もう救いがない」のだから、心のなかでは苦笑しつつ一生懸命に句を褒め、歳さんも気恥しそうにしながらそれを期待している……という、何とも人間らしいエピソードが大好きなんです。

 「土方さんは可愛いなあ」
 沖田は、ついまじめに顔を見た。
 「なにを云やがる」
 歳三は、あわてて顔をなでた。
 
 いや『燃えよ剣』の話はいいんです。豊玉発句集の中から「梅に関する」私が好きな歌を2首選ばせていただきます。

 梅の花壱輪咲ても梅はうめ

 写真を撮った時、実際はニ三輪かもうちょっと花が咲いていて、それをうまく取り合わせて華やかさを出した方がフォトジェニックかなと思ったのですが、この句を思い出してあえて一輪だけドンと主役に据えた写真を撮りました。高校時代の写真部の顧問がこの写真を見たら、
 「日の丸弁当みたいな写真を撮るな」
 と怒り出すかもしれませんが、いいんです歳さんの句だって下手だから。……なんて言うと今度は歳さんから「うるせえな」と拳骨を食らわされるかもしれませんが。でも本当、写真芸術的にはヘボでもいいんです。これは私が大好きな歳さんへのオマージュですから。きっと「フン、たいしたことねえな」と言いつつ、きっと気に入ってくれると思うのです。
 で、もうひとつの句はこちらです。

 梅の花咲る日だけにさいて散

 これは発句集の最後につづられた一句です。多摩から京都へ、京都から会津へ、会津から函館へ……武士として生きることを志し、最後まで戦い抜いて果てた歳さんのことを想うと如何にも象徴的です。
 もっとも小説やドラマで何度も復活し、函館で鬼神となって魔人加藤および新政府軍と戦ったあとにアイヌの黄金をめぐる戦いに参戦したかと思ったら記憶喪失のままアメリカに渡り、その後は時空を超えて異世界に召喚され島津豊久と殴り合いの喧嘩を繰り広げたり20世紀のニューヨークでベートーヴェンと一緒に召喚され悪魔と戦ったりと大忙しです。続けて書くとなんだかすごいことになったなあ。スミマセン歳さん愛がオーバーフローしちゃって……久しぶりに書くものだから、つい張り切りすぎちゃった……。


 まあ、そんなわけで一枚の梅の花の写真から延々と無駄話をつづってしまいましたが、確実に春は近づいているってことですよね。梅が咲き、やがて桜が咲き、穏やかな東風が吹くことでしょう。弊社は春が一番の繁忙期なので、のんびりお花見……という雰囲気ではありませんが、まあ気持ちもときめく時期だから頑張れます。皆様も季節の移り変わりを楽しみながら、できる範囲で頑張ってまいりましょう。本日もお読みいただきありがとうございました。

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