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大好きなアートと文芸関係、それに仙台を中心に私が見た日常のことを書いています。時々頑張って大体のんびり。もさらくさらの18年……。
栗駒山を降りて、仙台に帰ろうかという時の話です。

 元々極度の方向音痴で、来た道を戻ればいいのにどこをどう曲がったものか記憶があいまいになって、「何か違う気がするぞ」となってしまうことがよくあります。

 そういう時に「まあ何とかなるだろう」と思って走り続ければ何とかなることもありますが、何ともならないことの方が多い気がするので、早い段階で引き返すようにしています。その時もちょっと広い駐車場を見つけたので右折進入し、来た道を引き返そうとしたのですが、ふと目に飛び込んできたのは「ボンネットバス」でした。

 

 確かに私も昭和レトロ好きではありますが、まったく思いがけないタイミングだったので、ひどくビックリしてしまいました。そしていったんオートバイをその駐車場に止めて、近づいて写真を撮ってみた次第です。

 

 ここはどういう街なんだろう。そう思って少し周辺を歩いてみることにしました。ここからはまず、何の予備知識もなく、調べることもなく、ひたすら体験して感じた第一印象をもとに書いていきたいと思います。

 *

 特にどこに行こうというわけでもなく、ふらふらと歩いていると、こんな看板がありました。

 

 見たところ、やたらと広い広い空き地が広がっています。また看板を背にして街の方を振り返ってみると、道路も大きく開けていたので、

 「これはもしかして、昔、駅か何かがあったんじゃないか」

 と思って探してみると、やはりそうでした。

 

 なるほど、どうやらかつては「くりはら田園鉄道」というのがあって、ここは「栗駒駅」があったんだな、ということを知りました。

 

 そうなると、さっきの看板の裏面にある、この観光案内も納得がいきます。元より看板の雰囲気から、結構前に立てられたものだろうなとは思っていましたが、その頃の名残なのでしょうね。

 そして、ここからは「電車で栗駒まで来た人」の気分を作り上げながら「きらめきの六日町」商店街を歩いてみることにしました。



 六日町商店街はパッと見て、とても懐かしい感じがしました。それほど遠くない過去に、こういう街に私も住んでいたからです。事実として永遠にシャッターを下ろしたままの店が軒を連ね、その一方で昔からの雰囲気のまま現在も営業を続けているお店が混ざり合った商店街。

 店先で男性の店員が、おそらく観光で来たであろうグループの女性たちに街の魅力を語っていました。反対側の道路を、ヘルメットをかぶった女子中学生が自転車で駆け抜けていきます。子連れの母親や、風景に溶け込むように路傍にたたずみ煙草をふかす年配の男性がいます。

 そんな中にあって私はただただ(ほとんど迷い込んだ同然に)立ち寄ったよそ者ですが――いや、よそ者だけに、いっそう旅愁を感じました。

 ここで昨日読了した京極夏彦『遠野物語remix』より引用させて頂きます。

 やがて、陽が傾いてきた。
 風も吹き始めている。
 そうなると、酔った男共が人を呼ぶ声もどこか寂しく聞こえ始める。女達の笑い声や、子供達の走り回る様も、すぐそこの嬌声であり、目の前の情景であるのに、何故か遠くのものごとのように思えて来る。旅情が搔き立てられる。
 これこそを旅愁というのだろう。
 それは如何ともしがたいものだ。

 (角川学芸出版 京極夏彦x柳田國男 遠野物語remix 109ページ)


 通りを端っこまで歩き、再び商店街を引き返すことにしました。その時、本屋さんがあったので立ち寄り、一冊買って帰ることにしました。ちなみに店内にはイケメンキャラで売り出してた頃の狩野英孝さんのサインが飾られていました。

 また、たまたま通りすがっただけの私に親しげに話し掛けてくれるおばさんがいました。なかなか人と話すのが苦手な私ですが、とにかく話が止まらなくて、余計な相槌を打つ必要も無く……でも自分のことも少し話せて、すごく良かったです。ライダー同士ですれ違いざまに挨拶するとか、そういうちょっとした交流が今の私にはとても嬉しいんです。

 そうして、古いものと新しいものが混然一体となった不思議な街「六日町商店街」を後にしたのでした。皆様、お元気で。

 *

 で、ここからは、帰ってきて調べた情報です。

 六日町通り商店街公式ホームページ

 まずね、まず公式ホームページとかあるんですよ! インスタグラムもXもあるみたいだし! もう全然レトロじゃない! 現在進行形ですよスミマセンでした。

 公式ホームページのストーリーによると、平成28年に地域おこし協力隊の力を得て新しい街づくりに取り組んでいるところのようですね。確かに歩いていると、新しいレトロ風のお店なのかな? と思うところもチラホラありました(ボンネットバスのお店もそうです)。ま、休店日のところが多くて、全然魅力は伝えられないんですが……それでもいくつか外観の写真は撮ったので、それを載せてみます。

 

 何となく、最近読了した『帝都物語』を思い出しました。昭和70年代に大正時代の銀座をよみがえらせようとした鳴滝翁の話ですね。古い世界と新しい世界が混ざり合って、懐かしいような新しいような、奇妙な感覚を覚えます。これはもう一度、今度はこの商店街を歩くことを目標として、歩いてみなければなりません。バラージではないので、きっとたどり着ける、はず。

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