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大好きなアートと文芸関係、それに仙台を中心に私が見た日常のことを書いています。時々頑張って大体のんびり。もさらくさらの18年……。
『のぼうの城』(和田竜、小学館)を読みました。


物語は太閤の小田原攻めのおり、いくつかある北条氏の支城の一つである「忍城」で繰り広げられた戦いの記録です。この時に攻め立てたのは石田治部どの。配下には大谷吉継などを従え総勢2万の大軍です。それに対して忍城の成田方は500人程度。数字上では圧倒的不利です。

しかもその時に総大将を務めていたのは、「のぼう様」と領民からもバカにされていたお方。武芸よりも野良仕事を好み、そのくせ不器用で手伝ってもらうとかえって仕事が増えるというのだから、役立たずもいいところです。

そんな「のぼう様」が治部どのの大軍を相手にどうするのか? それは誰もが唖然とするような、もはや策とも言えないような行動でした・・・という感じです。


実は、途中でちょっと脱落しそうになりました。残念ながら「のぼう様」にまったく魅力を感じられず、戦国無双でもお馴染みの甲斐姫にもときめかず、もうダメかな・・・つって本を閉じようと思ったのですが、

「何かあるはずだ、きっと何かあるはずだ」

そんな期待をしながら読み進めて行きました。私もまた、なんだかんだ言いながら、「のぼう様」のことを信じていたのかもしれません。

果たしてその期待はかないました。個人の武力だけでもなく、知略だけでもなく。人の心をつかむ『将器』を持つ者こそ、人の上に立つものにふさわしい。山岡荘八先生の『小説徳川家康』で感じたことを、まさか『のぼうの城』でも感じることになるとは。いやはや、まったくもって恐れ入りました。

もちろん、坂東武者の荒々しさを体現したような猛将も数名出てきます。勇ましい戦の描写に心が躍ったことも事実です。でも、戦って華々しく討ち死にするだけではなく、しっかりと家を存続させるためにはどうすればいいのか。そういうことをちゃんと考えていた『のぼう様』は、繰り返しになりますが、恐るべき人だなと思いました。

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