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大好きなアートと文芸関係、それに仙台を中心に私が見た日常のことを書いています。時々頑張って大体のんびり。もさらくさらの18年……。
これまで、隆慶一郎という名前に対しては、作家というよりも『漫画原作者』のイメージが強かったです。いうまでもなく『花の慶次』であり『影武者徳川家康』ですね。

これまでは特に読もうとも思わなかったのですが、このたび山岡荘八先生の『徳川家康』を読了したのでね。そろそろいいだろうと思って、なぜか『影武者徳川家康』でもなく『一夢庵風流記』でもなく『かぶいて候』を図書館で借りてきた次第です。

どうしてコレなのかというと、漢漫画の紹介サイト『早池峰山』さんの中にある、「かぶいて候の秀忠が唯一世間一般の秀忠像に近い書き方をしている」という記載があったのをずっと前から気にかけていたからです。漫画のほうで秀忠公の極悪ぶりは十分にわかっていたので(無論、隆先生&原哲夫先生の書く、ですよ)そうじゃない秀忠公を見てみたい。そう思ったのです。


これまでは山岡先生の非常にまじめな世界観の中にいて、私自身もそれを心地よく思っていたところだったので、隆先生の書く『かぶき者』の世界には、脳震盪を起こしそうなくらいぶっ飛ばされてしまいました。

まず、主人公は鐘巻流の達人です。職業? は徳川家光の小姓なので、言ってみればSPのようなものです。そしてその実力は超人的なもので、突然家光を襲ってきた刺客を苦もなく返り討ちにします。やはり隆先生が書く漢たちは、みんなこんな感じなんでしょうか。

そんな男に惚れて付いて来るのも超人的な能力を持った連中なので、えりすぐりの暗殺部隊60名に襲われても傷一つ負わず、それどころか8割方をその場で返り討ちにしているという有様(残りは本拠地に戻った後すぐに自害して果てた)です。得物として愛用する剛槍も含めて、前田慶次レベルです。


そんな阿修羅のごとき強さを誇りながら飄々としている主人公に顔を赤くしたり青くしたりする将軍家や重臣たち。この物語での秀忠公は、なるほど、冷静沈着で賢い君主といった印象です(対して息子・家光は父親に「どうしようもない馬鹿だな」と言われる体たらく)。

その代わり、なんだか諸悪の権化みたいに描かれているのが秀忠公の奥さんである阿江与の方で、『異常に気位が高く、気性の烈しい女性である』と言われています。そして秀忠公が侍女にはらませた長男が二歳の時に灸をすえたせいで死んだことは『おそらく阿江与の方が殺したのだろう』といわれる有様。この件についてはあまり詳しくないので、肯定も否定も出来ませんが、さらりと恐ろしいことを書いています。

そして家光と将軍家ご指南役の柳生但馬守が衆道関係にあったという説もぶち上げています。さすがの私も、これには眉をしかめざるを得ません。これは、当時の風習として云々というよりも、柳生但馬守自身の人格を考えて、「そういうのはなかったんじゃないかな」と思うんです。あくまでも武人として、将軍家ご指南役として、家康・秀忠・家光と三代に渡って側にいたんだと考えています。


まあ、そういうことを差っぴいても、これはとても面白いです。惜しむらくは隆先生が急逝してしまったこともあり、主人公が武芸者からかぶき者にクラスチェンジし、さあこれからというところで終わってしまったことです。まあ、主人公のド派手なかぶき振りを無限に想像し続けるともいえますけどね。

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