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大好きなアートと文芸関係、それに仙台を中心に私が見た日常のことを書いています。時々頑張って大体のんびり。もさらくさらの18年……。


 先日、いきなりこの世を去ってしまったためか、グングン値段を釣り上げて高く売り抜こうとする下衆な方がいらっしゃるようですが、もしかしたら本当にプレミアな状況になっているかもしれないこの本について。ちなみに私はジュンク堂で普通に買いました。


 内容は、山本勝という人間がプロレスラー・山本小鉄となり、2008年(本刊が出版された当時)まで生き抜いてきた中で得た多くの人生訓をぎっしり押し込めたものです。ぎっしり、といっても1時間ほどで最初から最後まで読めるような分量、といえば大体想像はつきますでしょうか。

 ちなみに私が最初に買った小鉄本『人間爆弾発言』と比べると、語り口は随分と穏やかなものです。なんと言うか、『人間爆弾発言』は新日本の鬼軍曹度爆発大噴火な内容なのに対し、こちらは人間・山本小鉄の講演会といった内容なのです。

 そのため、私たちのような一般人でも構えることなくスッと受け入れられるし、明日から使えるような心構えとか、そういったものをたくさん得ることが出来ます。


 さしあたって私が強く感動したのは、「頼まれたら断るな」ということ。

 それは小鉄さんがまだまだデビュー前の若手だった頃。当時はリングの設営とか、そういった雑用が終われば後はフリーだったので、大好きなビールを飲んでいい感じで会場に戻ったところ、当初リングに上がる予定だった先輩レスラーが都合で出られなくなり、

 「お前、出ろ」

 と言われたのだそうです。

 普通なら、「えっ、ちょっと……」と躊躇するところですが、小鉄さんは即決。こうしていきなりやってきたチャンスをガッチリ物にして、初のマットを踏んだのでした(ハヤブサさんも同じような経緯でデビューしたと聞いたことがあります)。

 ここから小鉄さんが得たことは、「頼まれるということは、それだけ信用されているんだから、せっかくやってきたチャンスをみすみす捨てるような真似はするな」ということ。残業だ休日出勤だと言われてウンザリしている時は、このエピソードを思い出せば、俄然やる気も出てくるというものです(今日とか)。


 あとは、幼少期のエピソードですね。

 山本家はとにかく子沢山で、10人も兄弟姉妹がいたのだそうです。かといって特別に裕福だったわけでもなく、小学校高学年にもなれば、自分の食費や服のお金くらいは自分で何とかしなければならず、新聞配達やら何やらで駆け回ったそうですが、さすが! と思ったのは、そのことを別に誇るでもなく、

 「ずっとそういうものだと思っていたから、別につらいとは感じなかった」

 ということ。

 どんな環境でも、こう思えれば無敵です。ともすれば社会が悪い、政府が悪い、生まれが悪い、天気が悪い……とにかく自分以外の何かのせいにして、ひどい時には殺し合いにまで発展することもしばしばありますが、まず現実をちゃんと受け止めること。そして、その中で少しでも環境をよくしようとして努力をすること。そうすれば少しずつ変わってくる……「環境は、自分しか変えられない」という結論です。

 さしあたって私も私の家もあまり収入が多くないのですが(苦笑)、そのことを必要以上に落ち込む必要はないんだ、と思いました。たくさんお金を持っていても満たされない人は満たされないし、そうじゃなくてもこうして力強く生きていけるのだ。そんな風に思いました。


 *


 あとは、若手時代の失敗談苦労談、盟友(だった)アントニオ猪木をはじめとする当時のプロレスラーへの思い、そして鬼軍曹としての指導要領。とにかく山本小鉄という人の厳しさと、その内側にあるまじめさ、熱さ、そして優しさをたっぷり感じられる一冊でした。昔死亡事故があった某ヨットスクールの教官のように、ただ厳しくして自分は煙草を吹かす……そんなことでは誰もついて来ないのです。自分にも弟子にも厳しいからこそ、最後の最後まで小鉄さんは慕われ続けたのです。

 今回の訃報は、本当にがっくり来ました。正直なところ、三沢さんの事故の一報を聞いた時よりも、さらにがっくり来ました。会社じゃなかったらその場で泣いていたかもしれません。

 でも、まあ、ようやくゆっくり長い休みを取れるようになったのかな、と思います。10年間病院で過ごした祖父を見送った時も同じようなことを思いましたが、そんな気がします。

 ともかく、お疲れ様でした。私はただの一般人ですが、この本を何度も読み返して、強く生きられるようがんばりたいと思います。

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