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大好きなアートと文芸関係、それに仙台を中心に私が見た日常のことを書いています。時々頑張って大体のんびり。もさらくさらの18年……。

個展「砂漠の贈り物」
絵を描くことは手紙のやり取りに似ている。対面の会話に比べて速度は劣るけど、その分、重く、深く、より多面的な気持ちを伝えることができる。私は話す事が得意じゃない。とても苦手。だから絵を描く能力を発達させてきたのかもしれない。そう感じる。

観察がとにかく好きだ。道に生えている植物、街、動き、人、表情、空気、音など、あらゆる物事を観察することが好き。見て、興味を持ったら、そのことについてずっと考えてしまう。「どんな構造なんだろう」「アレとアレに似ている」「以前に観たアレと繋げたらどうなるかな」とか、連想が止まらない。

自分の心を描いている。自画像のようなもの。好きな人の事を想いながらも書く。頭のなかの空想を描いたりもする。これらが描きたい物事の全てという訳では無い。言語化が難しいもの、あるいは出来ないものを絵にするので、こればかりはしょうがない。

あらゆる物事は複雑だなと感じる。複雑な問題を考える事、受け入れる事は、脳にとって負荷が大きい。その分、世の中をフラットに捉える力が養われる。可能な限り、複雑な問題から目をそむけない様にしたい。世の中をフラットに捉えたい。その為に、肉体と精神の健康に気を遣い続けたい。

観に来てくれてありがとう。

みひろ
(会場内に掲示されていたステートメントより)



 RAPPIT/みひろさんの個展が開催されることは、例によって告知ポストカードで知りました。一体いつ、どの会場だったか……たぶん仙台写真月間の頃、SARPでもらったんじゃないかなって気がしますが……すみませんよく覚えていません。ただポストカードを見て、その絵柄にひかれて行ってみたというのは事実です。
 最初に行ったのが11月15日で、次に行ったのが12月8日。それぞれ異なる企画展を見るために来たのですが、2回ともしっかり、みひろさんの展示も見ました。
 会場の様子です。

 とりあえず、今こうして振り返ってみると、いわゆるSNS的な個展なのかなと思いました。とにかく分量が多く、画一化されたフォーマット。スマートフォンの画面で一枚ずつ画面をフリックさせるように、膨大な量の絵を眺めていく……そういう個展です。
 正直なところ、一度目は……あまりにも量が多すぎて、私のキャパシティでは受容できませんでした。1枚ごとに感じるところはあるのですが、あまりに短時間でこれほどの量の情報を処理することはできず、全体的にどんなイラストがあるかは全部(動画で)撮影したからいいか! といって、消化不良のまま一度目は帰ってきてしまいました。うまく言語化できなかったのも、そういうことかもしれません。
 それで今回リベンジというか、ちゃんと向き合って自分のものにしたい! と思って、
 「自分が良いと思ったものを10枚だけピックアップしてみよう」
 と決めて、2~3度会場をグルグル回って写真を撮りました(結局11枚撮っちゃいましたが)。

アデニウムの花言葉は、ひとめぼれ、純粋な心。
サボテンの花言葉は、枯れない愛、燃える心、暖かな心、偉大。
燕は幸運の象徴。
presentの意味は、現在、在る、贈り物。
(会場内で展示されていたテキスト)




 これはと思った11枚の中で、それぞれ特徴的なものを1枚ずつ公開してみました。
 みひろさんが「言語化が難しいもの、あるいは出来ないもの」をせっかく絵にしてくれたのに、今度は私がそれを言語化するという試みをしてみようと思ったのですが、いやこれは非常に難しいですね。とりあえず会場でメモした、もっとも生々しい感想を引用してみます。

印象としてはポップで可愛いんだけど優しくはない。爪を立てて心をガリガリガリガリ引っかかれて、皮膚が裂けて血が噴き出してもまだ足りないと言って、今度は鉛筆を突きたてて力任せに引き回されたような感覚を覚えた。……毒がある。その毒はとってもおいしくて刺激的で心にたまってしまうけど、だから忘れられないし、忘れられないのにまた見てみたくなる。相変わらず楽しい。……


 神経症というか、もはや精神分裂病のような……かなり狂気めいたことを書いていますが、たぶん本当に「一時的な狂気」に陥っていたんじゃないかな。こないだ亀井桃さんの個展について書いた時、主催者の言葉として「毒気のさじ加減」という言葉があったのですが、みひろさんの絵にはその毒気がふんだんに盛り込まれているような気がします。そして十代の頃から毒薬や劇薬みたいなものを過剰投与して生きて来たから、個人的無意識の方で勝手に反応しちゃうんです。
 これが今の私にできる精いっぱいの言語化です。私はみひろさんとは反対に絵を描くことが絶望的に苦手で、何でも言語化しようとする人間なのですが、そんな小賢しい考えを破壊して感情を爆発させてくれる……良い意味で私のことを狂気に導いてくれる……危険なほど波長が合うイラストであったと思います。
 あと、「SNS的な個展」と先に書きましたが、さっき気づかなかったこととして……「伝えると伝わる」の距離感がとても近いのかな、って気がしました。描き手の人が表現したいことと、それを見る私の距離感。より近い距離からより刺激的なものをぶつけられたので、私もその分強く反応してしまったのかもしれません。
 ひょっとしたらカワイイとかエモいとかバエルとか、そういう、ある意味では分かりやすい感想で言い表すのが適切な種類のアートなのかな。それをこうして無理やり言語化しようとするから、破綻が来て、狂気に至るのかもしれません。
 でも、やっぱり私には言葉しかないんですよ。自分の気持ちを可能な限り言語化する。自分でアートは上手にできないから、ブンゲイで自分の気持ちを表現していくしかないんです。だからこういう試みは、これからも続けていきます。そうすることで、私の心にしっかりと刻み込まれて……無意識の闇に放り込まれて手が届かなくなることを防ぐことができるのですから。すなわち、消費されない文化。
 
 ともあれ、とっても素敵な個展でした。一応芳名帳には本名と佐藤非常口の名前を書いたし、インスタグラムにもコメントを出しました。そして今回こうして記事を書きました。これがどれほどの人に伝わるかわかりませんが……ひとりでも多くの人に読んでもらえたらいいなあ……。

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