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大好きなアートと文芸関係、それに仙台を中心に私が見た日常のことを書いています。時々頑張って大体のんびり。もさらくさらの18年……。
 たとえば私が映画評論家、あるいは映画の感想でゴハンを食べるような人間であればアレコレと理論を振りかざし、いいの悪いのと言わなければならないのでしょうが、何せ私は素人ですので、そこまで構えなくてもよろしい。

 三船敏郎という人は、まあ個人としては破綻者だったようですが、この際私は知りません。

 黒澤明という人は、いいって言う人とダメだって言う人がいるようですが、それもこのさいどうでもいいのです。

 ただ言えることは、この「椿三十郎」は抜群に面白い、ということなのです。そして(元々、娯楽映画ですし)三船敏郎は抜群にかっこよく、無理やりにでも「岡目八目」だの「あぶなっかしくていけねぇ」だの「もうすぐ四十郎ですが」だのと使ってみたいのです。

 もっとも私は四十郎どころか三十郎ですらなく、しらがの七十郎の向こうを張って、せいぜいふぬけの二十郎、あるいはタイトルにもあるニコニコ二十郎などと名乗るほかなく、押入れに閉じ込められて何かというとでしゃばる見張り役の男にも劣る体たらくなのですが。いや、私のことはどうでもいい。


 とりあえず、見る前と見た後では大分このキャラクタのイメージが変わった、ということですね。

 はっきり言えばパッケージを見る限り、この浪人は人斬りを生業とする血なまぐさい、むしろ人を斬ることで生を実感するとかいう、破綻者のイメージだったのですがどうにも人間くさい。見てる側もやきもきしてしまうくらいアンポンタン(もちろんそれも若さと正義ゆえ、ではあるのですが)な若侍たちに、乱暴ながらも何かと世話を焼くし、女性にもかなり優しい。もちろんここで言う優しさというのはいわゆる日本的なさりげない優しさなのですが。

 「強さ」というのが、単純に人を斬る腕っ節だけではない、ということを強く感じたのが、中盤の三船三十郎の台詞でした。

 「また無駄な殺生をしちまったじゃねえか!」

 悪人軍団の仲間入りをする振りをしながら様子を探る三十郎のもとに、血気にはやった数名の若侍が勝手に行動したあげくあっさり敵に捕まり、それを助けるためにそこに居合わせた十数名からの人間をことごとく斬殺した後、その若侍たちに激怒しながら言った台詞なのですが、これがとても素敵な言葉だと思いました。

 人を斬ること、実戦の修羅場をたくさんくぐればこそ、あの強さが身につく。それは否定できないのですが、その割に三十郎は人間くさい部分を多分に残しているのですね。笑いがわかるというか、悪巧みもさることながらどこか戦闘マシンのような非情さを持つ仲代達矢とは大分違います。


 基本的に映画というものを見る時は、せいぜい100分前後がギリギリであるため、たとえば七人の侍なんかはまず手に取れないのですが、これは時間的にもちょうどいいですし、アクションよりもそういう人間くささ、親しみやすさをとても感じさせてくれる、なるほど、名作というのは誰でもがいいと思うから名作なのだな、などと当たり前のことを実感した日でした。

 なお、リメイク版を見に行く予定はありません。役者がいかんよ役者が。松田優作と三船敏郎。どちらもプライベートは知りませんが、物語の中で見るこのふたりは、何よりもかっこいい。できればこういう「三十郎」になりたいものです。

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