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大好きなアートと文芸関係、それに仙台を中心に私が見た日常のことを書いています。時々頑張って大体のんびり。もさらくさらの18年……。
 犬神は江戸川乱歩という作家を、大槻ケンヂ氏のエッセイ集「SR311」で知りました。

 「人間椅子」という、なんだかおどろおどろしいタイトルの短編が紹介されていました。なぜか先にバンドの方の人間椅子を聞いていたので、よりいっそうそのイメージが強かったのですが、オーケン流の紹介を読んでいると、ただのバカ小説に見えてくるからたまらない。

 この、「世間一般では大真面目に捉えられているものをわざとヘンテコな角度から眺めてみる」というのを思春期に覚えて以来、基本理念としていい大人になった今でも持っているのですが、自分で発見し、そういう意味で大好きになってしまった作品があります。

 梶井基次郎の「檸檬」であり、太宰治の「美男子と煙草」です。

 
 丸善に行って、画集をドカドカ平積みにした挙句、レモンを置いて立ち去っていく。丸善サイドからしてみればいい迷惑といったところです。もちろんそういう「ちょっとしたいたずら心」を素直に書いたこの短編は、私も大好きなのですが、たとえば私がその時に丸善の店員としてそこにいたら? と思うと、ムクムクと突っ込みたい気持ちが湧き上がってくるのですね。

 ただ、モデルになった丸善が閉店になる時も、レモンを置いていく人たちがたくさんいたと言いますが、いかにも素人っぽくて嫌だなあと思ったのですね。ヒネリを効かせて柚子とか、グレープフルーツとか、いっそ本物の爆だ(当局の指示により以下削除)。


 「美男子と煙草」は、全編が太宰のひがみのオンパレードであり、その卑屈っぷりが私はたまらなく好きなのですね。

 『太宰治といえば、浮浪者。浮浪者といえば、太宰。何かそのような因果関係があるのでしょうか。』

 『……太宰はあれは小心者だから、ウイスキイでも飲ませて少し元気をつけさせなければ、浮浪者とろくに対談も出来ないに違いないという本社編輯部(へんしゅうぶ)の好意ある取計らいであったのかも知れませんが……』

 『(上野の浮浪者と一緒に撮った写真を見た妻は)本気に私の姿を浮浪者のそれと見誤ったらしい。』


 まじめに考えれば当然、別な解釈もあろうかと思いますが、私は単純に太宰がひがみ根性を原稿用紙に余すところなくぶちまけた、といった印象であり、いまだに「斜陽」も「人間失格」も「走れメロス」さえも読んだことはありませんが、これが収録されている「グッド・バイ」(角川文庫)だけはよく読み返します。

 あとは安部公房「鞄」なんかも好きなのですが、これは割とまじめに好きなので、また別な機会に。

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