『燃えよ剣』での土方歳三は、自分の理想とするものを作るために自分にも他人にも厳しい『鬼の副長』として描かれておりますが、時としてその厳しさは近藤局長に向けられることもあります。
ほとがら、というのはフォトグラフのことです。当時、禁裏御守衛総督という肩書きだった一橋慶喜が写真大好きだったこともあり、とにかく大名をつかまえては写真を撮らせていて、近藤局長もその対象になったってわけですね。
それが、よく見るあの写真なのでしょうが、当時は露光にものすごい時間がかかったため、さすがの近藤局長も表情がかたくなってしまいました。
「歳三は、ばかばかしくなった。京都政界の大立物になった近藤の写真は、これで永久に残るだろう。息をつめて、それがために悪鬼のような形相になっている近藤の写真が。」
土方さんはそういうのが嫌で、この時は写真を撮りませんでしたが、後にあの洋装写真を撮ったのは皆様ご存知の通りです。
そんなころ、歳三の眼からみればじつにばかばかしいことが、おこった。
この年、ちょうど年号がかわって慶応元年の正月のことだが、歳三は大坂へ出張した。
(中略)
廊下を、近藤がゆく。
なんと、顔を真白にぬたくって、公卿も顔負けの化粧をしているのである。
(野郎、とうとう気がくるいやがったか)
(中略)
「どうしたんだ」
「これか」
近藤はにこりともせずに自分の顔を指さし、
「ほとがらよ」
(畜生。……)
歳三はこわい顔ですわった。京都では、化粧のことをほとがらとでもいうのだろう。
「きょうは、はっきりというがね。お前さんは近頃料簡がおかしかねえか」
歳三は、沖田にいったようなことを、ずけずけといい、
「人問、栄誉の座にのぼるとざまァなくなるというが、お前さんがそうだね。おれはお前さんをそんな薄っ気味のわるい白首の化物にするために、京へのぼったんじゃないよ」
「歳、言葉をつつしめ。おらァ、おめえの多摩の地言葉でまくしたてられると、頭がいたくなってくる」
ほとがら、というのはフォトグラフのことです。当時、禁裏御守衛総督という肩書きだった一橋慶喜が写真大好きだったこともあり、とにかく大名をつかまえては写真を撮らせていて、近藤局長もその対象になったってわけですね。
それが、よく見るあの写真なのでしょうが、当時は露光にものすごい時間がかかったため、さすがの近藤局長も表情がかたくなってしまいました。
「歳三は、ばかばかしくなった。京都政界の大立物になった近藤の写真は、これで永久に残るだろう。息をつめて、それがために悪鬼のような形相になっている近藤の写真が。」
土方さんはそういうのが嫌で、この時は写真を撮りませんでしたが、後にあの洋装写真を撮ったのは皆様ご存知の通りです。
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