2年前に復刊ドットコムからのメールでその刊行を知り、これを読んだ時は、正直なところその圧倒的なエネルギーに気圧され、ちゃんと受け止めることが出来ませんでした。
三島由紀夫や澁澤龍彦といった作家の方々が大活躍されていた1960年代。80年代生まれの私にとっては、それはリアルタイムではなく、本を読むことによってのみ、時代の雰囲気を共有することができるわけですが、それにしても非常にエネルギーに満ち満ちた時代だったのだな、といつも思います。
それは、私が「よりにもよって……」といった作家の本ばかり読んでいるから、ということではない、と思います。
本書はそんな時代に活躍され、30代の若さで急逝した舞踊家・伊藤ミカさんの生涯について、約40年ぶりに帰ってきた資料や日記をもとに元夫・伊藤文学さんが書かれた本です。
読んでいて思ったのは、日記と言う非常にプライベートな場だからこそ明らかにされていた、伊藤ミカさんの心の成長と激しい葛藤。第三者目線、または伊藤文学さんからの目線では気づかなかった心情が、とても詳細に(伊藤ミカさん自身の言葉で)書かれていて、胸が締め付けられるような思いでした。
やがて舞踊の稽古からオリジナルな作品の構想にいたり、平凡な中学教師から『舞踊家・伊藤ミカ』としての芸術追求が始まります。
2年前もそうだったんですが、伊藤ミカさんの芸術論を完璧に理解し、これを私の言葉に翻訳する……などという真似は出来ません。ただ、2年前は読後に何も出来ないくらい激しいパワーにやられてしまったので、今回はこうして感想だけでも言葉に出来たのはよかったかなと思います。あ、まだ感想書いてないか。
ともかく、まさに『駆け抜けた』という言葉がふさわしい生涯だったようです。もちろん私が「こうありたい」と思うような感じではありません。伊藤ミカさんが掲げる芸術論も、私には30パーセントも理解できるかどうか、といった感じです(ちゃんと理解できるようになるためには、今の生活をすべて捨てるくらいの覚悟が必要でしょう、きっと)。
誰にでもオススメできる本ではない……かもしれませんが、ともかく60年代という時代の雰囲気が存分に味わえる一冊でした。
ちなみに翻訳者である澁澤竜彦さんの名前も出てきます。『O嬢の物語』上演に際し、許可を得るために電話でお話をされたそうです。非常にさばさばした感じで「あ、いいですよ」と快諾されたとか。
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