私が古本屋で買って読んだのは、1999年に出版された単行本の方でした。まあ中身はたぶん、どっちも変わらないでしょうけど。
私はそもそも『仮面ライダーのいない時代』に幼少期を送ってきた身なので、それほどライダーに対する思い入れというのは、ありません。いや確かに『ブラック』があったのですが、当時の私には怖いイメージしかなく、そこに憧れを抱くところまでは行きませんでした。
そうするといわゆる平成ライダーはどうか、となると、そういうヒーロー不在の時代を生きてきたので、これまたそれほど思い入れがありません。唯一『ディケイド』だけは大好きなのですが、それでも大人も大人、いい大人になってから見たので、単純に憧れ、とは、違うように思います。
じゃあどうしてこんな本を買うんだよ、という話になると思うのですが、ライダーにそれほど思い入れはなくても『藤岡弘、』さんは大変に尊敬の念を抱いていますし、憧れもありますし、要するに大好きなんです。
撮影中の事故で足を複雑骨折し、いったん退場。さあどうする。打ち切りか。いやいや「ライダーは死なない」んだからそんなことしちゃいけない! そんな平山プロデューサーの熱血エピソードや、大野剣友会の皆様の職人気質など、当時の人たちの猛烈な空気の記憶を、藤岡さんが思い出しながら書いている。そんな内容です。
村枝賢一先生の『仮面ライダーを作った男たち』とか、そういうのがたくさんある時代で、マニアの方には目新しい要素はないかもしれません。ただ、私はひたすら素直に当時の撮影現場の雰囲気を感じ、はぁ~と感嘆のため息をつくばかりでした。
最近の映画とかドラマとかで、出演者が撮影現場を語る時、「みんな笑って和気あいあいとした雰囲気で作っていました」という言葉を聞きます。もう100回以上色々な人が言っているのを聞いたような気がします。
もちろん、それはとてもいいことだと思うのです。演じる時も演じた後もそうやっていい雰囲気でいられるのは、すごくいいことだと思うのです。
だから、これは是非を問うのではなく、当時の撮影現場はそんな感じだった。それだけ。
そういう前提で語りますが、当時はものすごい職人気質の人たちが集まって『少しでもいいものを作ろう』という裂ぱくの気合いがほとばしる現場であったといいます。特に大野剣友会の皆様なんかは、私たち素人からしてみればムチャなアクションでも会長の「行け!」の一言でポーンとこなしてしまう。そしてその裏にはたゆまぬ練習と、会長への絶対的な信頼があったからできるのだ……。
いわゆる、山本小鉄論ですね。激しさ、厳しさの裏にある情熱と優しさ。当時のやり方をそのまま2010年に持ち込んでも、そのまま通じるとは思いませんが、確かに当時はそういうのがあって、そういうのがみんなをひとつにまとめていた。ちょっとだけ、うらやましいような気がするのです。
特撮マニアではなく、俳優・藤岡弘、さんを尊敬してやまないひとりのファンとして、今度『仮面ライダー』を見てみよう。そう思いました。
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