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大好きなアートと文芸関係、それに仙台を中心に私が見た日常のことを書いています。時々頑張って大体のんびり。もさらくさらの18年……。
こんばんは

サムライ・ハート・ウィル・ゴー・オン

「森のキュイジーヌ」管理人のいぬがみです(プラチナ)。


随分前に買った星亮一+遠藤由紀子『ラストサムライの群像』を読みました。

これはサムライと呼ばれた男たちが綺羅星のごとく輝き、その後超新星のごとく消えていった幕末時代の英傑たちを取り上げた本です。もちろん私は極・大好きな土方歳三さんが最初にフィーチャーされているので買いましたが、そのほかにも中村半次郎・スネル兄弟・乃木希典といった人たちも取り上げられています。乃木希典というと旅順攻略戦などの「乃木大将」のイメージであり、幕末の維新志士(長州)だということは、この本で初めて知りました。

そんなわけで、正直なところ土方さんと沖田君の項目を読んで以来しばらく続きをめくる気がせず(まあ、私生活で色々ありすぎて、ゆっくり本を読む余裕がなかった…というのが実情ですが)、随分と読了するのに時間がかかってしまいました。

とはいえ、やはり一通り目を通せば、それまで名前も知らない・あるいは良いイメージを持っていない人たちに関してもウムムとうならされたり、そうだったのか! と目を開かされたり。つくづく、幕末の時代というのは日本の歴史の中でも特異な、激動の時代であったと感じます。

以下、オムニバス形式で収録された本書の形にならい(?)私も断片的に感想を書きます。


・「唐芋半どん」中村半次郎

基本的に私は奥羽越列藩同盟側の人間(岩手県出身)なので薩長の人たちは…どんなに歴史上素晴らしい活躍をされたとはいっても…そのことを全く否定するわけではありませんが…素直に受け入れられない部分があります。この中村半次郎という人もそうでした。

何せ二つ名が「人斬り半次郎」ですからね。幕末四大人斬りとしてピックアップされていること、明治維新後に西郷隆盛をたきつけて西南戦争を引き起こさせた(というイメージ)など、超好戦的な人物だというイメージがあったんですが、どうもこの本によると、そうではなかったみたいですね。

元々貧乏な家の出身で、いつもサツマイモばかり食べていたため「唐芋武士」などとバカにされることもあった半どん。そういった生い立ちのためか人をいつくしみ、思いやる温かい心の持ち主であったと言います。もちろん人を斬ったことは事実であるものの、どうもその一度きりだったみたいで。そうなると、本当やむにやまれぬ理由で刀を抜いたのかな…と思ってしまいます。だから私もあえて「半どん」と薩摩風の愛称で呼ばせていただきます。西南戦争はある意味「半ちゃんのドンといってみよう」です。略して「半ドン!」(??)。

・「会津のロレンス」スネル兄弟

幕末の有名外国人と言えばやはり武器(死の)商人グラバーでしょうね。明治維新において旧幕府軍を圧倒する最新火器をガンガン輸入し、たぶん莫大な財産を築いた成功者。

スネル兄弟も同じように、会津藩に武器を提供した商人ではありますが、こちらは動機が違います。「戦争があれば武器が売れて、儲かるワイ」とそろばんをはじいたグラバーに対し(?)、スネル兄弟は会津そして奥羽越列藩同盟を思い、これを何とか助けようと商売人として以上の働きをしたのだと言います。

すなわちガトリング砲をはじめとする最新兵器の輸入、軍艦の購入手引き、兵隊の補充(傭兵をインドから雇って外人部隊を編成すればいいと進言した!?)などなど…二人は心から会津にほれ込み、これを救おうとしたわけです。そのことを著者は「アラビアのロレンスのようだ」と評しています。

ちなみにこの兄弟、羽織袴に大小を手挟みピストルをぶら下げて会津城下に居を構えていたのだと言います。まさに青い目のサムライ、異人侍です。本当に青い瞳かどうかは、白黒写真しか残っていないので不明ですが。

・会津人の見た「長州藩士・乃木」

この本の最後に取り上げられたのは会津藩の白虎隊出身で、東京帝国大学の総長にまで上り詰めた山川健次郎氏、そしてその山川氏が尊敬する五歳年上の長州藩士・乃木希典…要は乃木大将です。私は別に軍人として尊敬しているとか、そういうわけではないのですが、どうしても「乃木大将」と言わないと落ち着かないので、以降はそうさせていただきます。

乃木大将と言えば「旅順攻略戦」のイメージが強く、この本を読んで「えっ? 乃木大将は長州出身だったの!?」と気づいたぐらいなんですが、二人の間には特に会津長州の因縁はなかったようです。

そして山川氏は乃木大将が殉死された際、その死について、

「もちろん殉死という意味もあるだろうけど、本当は旅順攻略で死なせてしまった部下たちに心の中でした約束を果たすため、ということもあったのだろう」

と語っています。

旅順攻略戦についての乃木大将の采配に関しては、色々な見方があろうと思います。ここで詳しく語るのは控えますが(語るほどの見解を持っていないし)、難攻不落の要塞を目の前に総攻撃の指令を出すのは「死にに行け」と言っているようなものだ、と山川氏は考えます。ただし、「君らばかりは死なせん」今すぐというわけにはいかないが、いずれ私も後を追うから…という思いを胸にそういった指令を出したのだ、と亡き先輩の心中をおもんばかります。

それは自らのバックボーン――藩のために自刃した家老・萱野権兵衛や白虎隊の仲間たちのイメージと重なったのかもしれません。そう考えると、乃木大将のことをもう少しちゃんと理解しなければいけないな、と私も思いました。

それと同時に、これは一通り読み終えての感想なのですが、つくづく自分はサムライと呼ばれた人たちに強いあこがれを持っているのだな、と思います。今は生涯の伴侶を得た喜びに浮かれる一方、職場で色々と悩むことがあります。正直なところ、「もう、自分の力ではこれ以上、この仕事を続けられないんじゃないか」と泣きながら(?)思いつめることが、ここ数日、何度かありました。

でも、こうして歴史の激しい荒波にのまれ…いや、その荒波に真っ向から立ち向かい、逆方向に泳ぎ切ったりうまく波に乗ったりした男たちの話を読むと、あきらめるのはもう少し後にしようと思いました。だって、私ずっとそうして生きてきたから。誠心誠意。その想いがあったから、素敵なパートナーと巡り合うことができたんだし。

うん、こうして改めて書き出すことで、それを認識することができました。そういうわけで、今日はこの辺でお開きに…。



ちなみに、この本の共著者である遠藤由紀子さんは1979年生まれ…私の二つ年上です。いや、そのくらいしか離れていないんです。それなのに、こんなに切れ味鋭い文章でザクザクと斬り込んでくることに私は最後の最後(著者略歴を見た時)で衝撃を受けました。もう歴女とか、そんな甘っちょろい肩書じゃ足りませんよ。

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