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大好きなアートと文芸関係、それに仙台を中心に私が見た日常のことを書いています。時々頑張って大体のんびり。もさらくさらの18年……。
(記事の流れの都合上、出てくる登場人物とか内容について多少触れています。ご了承ください)




久々に本を一冊読みました。ずいぶん前に八戸の本屋で買ったものです。

タイトルは『冬を待つ城』。直木賞作家・安部龍太郎先生が我が岩手の勇将・九戸左近将監政実公……の兄弟である久慈四郎政則を主人公に据え、奥州仕置の名の下に派遣された大軍と戦った『九戸の乱』と呼ばれる戦いを描いたものです。

この戦いをモチーフにした物語と言えば、なんといっても高橋克彦先生の『天を衝く』なんですが、『天を衝く』が凄まじいパワーで一気に駆け抜ける烈火の如き物語だとすれば、こちらは様々な人の思惑・理想・信念などが複雑に絡み合う重厚な物語です。

戦いの当事者は政実公と南部信直公なんですが、どさくさに紛れて自分の野心を満たそうとする津軽為信や伊達政宗公、そして秀吉と、その名を借りて暗躍する石田治部殿……。

これら歴史上の人物にくわえて、人里離れた山中に隠れ住む者たちが合わさり、話はまだ東北の人たちが『蝦夷』と呼ばれていた時代までさかのぼります。時間とかクーカンとかヤカンとかを自由自在に行き来し、ちっともトンチンカンではない物語にすっかり飲み込まれてしまいます。

なかなか忙しいふりをして、読了するまで長い間があいてしまいましたが、何とか最後まで読み切ることができました。そして物語の佳境から終章までの展開に心がじわりとしてしまいました。無論、この戦いの結末がどうなったのかは言いませんが、読んでいたのが公共の場所でなければ、しばらく感涙にむせんでいたことでしょう。


史実とも高橋克彦先生の物語とも違う、新しい『九戸の乱』。人によっては途中で「あれ?」と思うような展開もありますが、ともかくとても面白いです。東北人も、東北人でない人も、ぜひ一度読みましょう。

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